働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

助成金ビジネスは汚い

助成金ビジネスは汚いといわれる。怪しいとか胡散臭いという人だっている。

いろいろ悪いことする人たちがニュースになったりするけれど、汚いビジネスの温床に国が膨大な予算を組むだろうか。国にも何か思惑があるに違いない。

中小企業でも大企業でも、規模を問わずに経営資金の捻出には最も頭を悩ませる難題であり、当社も例外ではない。運転資金は多いに越したことは無く、助成金のような雑収入はそのまま資金として制限なく転用できる。

とはいえ助成金をもらうためには申請書類をそろえるだけではなく、労働環境を整備し、一定以上を維持しなければならない。賃金台帳は当然、タイムカードや社会保険の届出など法律で決められた企業義務をしっかりと守らなければならない。10人未満の小規模企業ではほとんどが甘いが、事業活動の基本を抑えないと一円ももらえない。

苦情やトラブルとなっている一部のコンサルタントさんは、受給するためだけに適当な書類を取り繕って後のことを考えないので問題となる。着手金と合わせて受給してしまえば手数料もがっぽり入るので後の事など無視してもよいのだろうけれど、僕たち社労士はちょっと違う。

顧問契約をすればこちらから中途解約することも基本的にはできないため、助成金受給は手段であって、目的は永続的な労働環境の整備となる。それでも、中小企業にとって後回しになりがちな就業規則の作成やしっかりした労働時間管理など、助成金を受給するための要件は多岐にわたるため、ここで社労士の力が発揮される。実はここでしか発揮されない。お金をちらつかされて環境整備を強制するのだ。

経営者は事業継続のために日々心血を注いでおり、どのような動機であっても労働環境が整備されることは従業員にとっては必要なことで、助成金というお金をもらうためであったとしても結果オーライだ。

昨今は人材不足倒産などというニュースもよく耳にし、事業活動に人材は欠かせない。人材は正しく整備された労働環境があって初めて力を発揮してくれる。

私たちの顧客もはじめは懐疑的な経営者がいたが、働く人達のためになるならと、休暇取得や外部研修への参加、パートの健康診断などでも積極的に受けさせるようになった。働く人たちは社長が優しくなったと思っているが、実は助成金が欲しくて優しくしている。

助成金という餌につられて会社は将来にわたってルールを定め、会社の環境もよくなり、離職率もトラブルも大きく減少し、新しい社員たちも増える。これが厚生労働省の思惑なのだ。実に上手い。

損得で行動を決定する経営者にはお金はやっぱり効果的で、補助金助成金など、様々なお金に関する施策を提案、補助していれば専門家として信頼を勝ち取ることは容易だ。私たち無しでは経営できないようなことを言い始める人もいる(それは思い過ごし)。

信頼を得るからこそ対等の立場で経営問題に指摘することができ、以前ならばすぐに社員をクビにするなどと噴火しやすかった経営者は、今はクビなどと発言しない。社長の好き嫌いで勝手に首にすれば助成金は6か月受給できなくなる。金がからむと冷静で、血迷った行動も起こさないようになることは関心する。そしてさらに雇用関係助成金は6か月以上続けてくれなければ一円ももらえないので、すぐ辞めないような気配りもできるようになる。恐ろしや助成金の魔力。

おかみの思惑に従うのはプライドの高い経営者にとって屈辱かもしれないが、しっかり労働環境を整備し、従業員が実感してくれればお金ももらえて従業員のエンゲージメントも上がる。一石何鳥だ?

汚いとか怪しいとかいうやつに限って労働者をこき使っていたりする。確かに怪しいビジネスは存在するが、清廉潔白な経営も存在しない。

動機は不純でも、正しく手続きして金をもらって、結果的に良い方向に進むのだから別にいいじゃないか。

 

 

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