働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

不動産業界の働き方改革

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不動産業界はキツい。

 

このイメージを払拭しなければいまの不動産業者はどんどん衰退する。もちろん、人手不足によって。

 

男女問わず育児休暇を取得したり、時短勤務したりなど、不動産業界で「働き方選択」は難しい。時には営業したくない時もある。体調不良だって当然あるが、気合と根性で毎日働かなければならない。

 

なぜか。

 

それは、不動産のプロ育成という標語の下に、一から十まですべての業務を一人の営業マンがこなす構造になっており、突発的な来客や問い合わせのすべてに対応しなければならないからだ。当然にこなせなければ一人前の不動産営業マンと呼べない。毎月の売上報告は最高にキツい。

 

特に賃貸仲介会社は取扱い件数が多いため、繁忙期は膨大な業務と不測にそなえた待機時間で長時間労働が常態化している。休日でも電話は鳴るし、休むなんて口にできない。

 

この環境では、常に健康で、全力(長時間)で働き続けることのできる営業マンしか残らない。そんなスーパーマンは存在しないし、辞めたり死んだりしたら経営が成り立たなくなる。

 

既に事業ライフサイクルの衰退期に差し掛かりつつある不動産仲介業に対して、私は短期的に高コストになったとしても営業プロセスを分業化し、別の担当者や部門にリレーしたり、ノンコア業務をピールオフ化(外注)する方法を強く推奨している。いわゆるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という他業種では当然に行われている経営の手法だ。

 

特に法人客の賃貸契約は継続依頼が見込めてストックの要素が大きい反面、規定の事前チェックや社宅代行会社の要望も多く手続きが煩雑で、ある程度のキャリアがないと取扱いが難しい。

 

そんな法人契約の事務作業を代行して請け負ったり、助成金活用や管理職者への指導、集客営業の代理や採用戦略の指南や採用代行(RPO)など、経営基盤を維持できるよう多面的に支援して雇用を維持し、社員たちが最高にハッピーな環境で能力を最大限発揮し、地域ナンバーワンの仲介業者になることを支援するのが当社の仕事だ。

 

 例えば追客や反響対応、契約関連の手続きなどを専門に担当してくれる事務部門があれば、営業はいつ何時呼び出されるかわからない着信におびえることもなくコア業務である対面接客に集中することができる。また、業界には少ないが女性営業マンの出産や育児のライフイベントに対して、一般事務業務だけの部門に異動できるような働き方ができれば、離職の一択だったものから部署移動という新たな選択肢が増える。

 

そして分業の成否を分ける重要なファクトは、分業された部門間でいかに連密なコミュニケーションをとれるかどうかにかかっている。

 

よくある間違いは、毎日会議したり、情報共有のためのマニュアルを作成したり、社長のありがたいお達しをもって共有を強制しようとするが、コミュニケーションは強制されるものではない。そんなことに時間を使っているとそもそも労働者の実労働時間は短縮されない。

 

コミュニケーションには気軽さが必ず必要で、格式ばった会議やマニュアル通りのメール文章では大事なものが抜け落ちる。しかしこの時代には簡単に、気軽に連絡を取り合う方法がある。LINEも、サイボウズも、チャットワークもSlackもほぼタダで使わせてくれる。現代のテクノロジーを駆使して自社に最適なツールを模索することもまた経営の責務となる。企業の生き残り、現状維持以上の経営を維持するためには、働き方改革とテクノロジー活用の両輪は外せない。

 

一連の業務をその時々、長い人生の変化に応じて選択できるようにしなければ雇用は維持できない。 借金してでも雇用は維持しなければならないのは経営者の宿命だ。年収1,000万円必要な社員なんて必要ない。皆そこそこの収入と、そこそこの充実した労働とプライベートを求めている。

 

なお、雇用維持や環境改善に積極的な会社には、助成金等政府関連の「おいしい」補助も受けられる。昨今の流れからして、さらに助成金関連は増大していくと見込まれる。

 

接客が好きな人間は接客を。事務作業が好きな人間には事務作業を。ライフイベントに合わせた異動の選択肢を。一人がこなしている業務をそれぞれ分業し、それぞれに質を向上していくことができれば会社全体として生産性が向上し、さらに利益還元することで雇用維持につながる。所定休日だって120日程度なら余裕で取れる。定着率と業績が連動していることは勉強すればわかる。優秀なセールスパーソンが離職してしまうことを思えば、休暇を与えることなど安いものだ。

  

まずは長時間労働から解放することがどの業界にも必要な時代で、賃貸不動産会社も例外ではなく働き方改革働かせ方改革)に取り組まなければ生き残れない。

 

不動産取引の電子化全面解禁をはじめ、IT技術の波が不動産取引を抜本改革してくれるのはまだ先で、社員たちはその日まで待ってくれない。素晴らしいITツールも使う人がいなければ素晴らしいかどうかもわからない。

 

不動産は奥が深く、生涯学べる業種である。その基盤を用意することが、経営者の責務ではないか。

 

不動産検索サイトや求人に高い広告費を払うなら、従業員に還元して長く続けてもらったほうが、生産性も高まるし善いことだと思うのだけど、なかなか慣習は覆らない。

 

変化することは恐ろしいが、変化しないことはもっと恐ろしい。

 

既に始まっている生き残りをかけたサバイバル。人材不足倒産は身近に起きている。

 

 

 

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