働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

起業だけは絶対にしてはいけない

私の会社も無事三期目を迎え、ようやくベンチャー企業を脱出できるタイミングが近づいてきた。そんなが私がお勧めしない起業のススメ。起業を考えている人たちは絶対に起業してはいけない。鼻息荒い皆さんに絶対に起業してはいけない理由を先輩の私から述べていこう。

 誰も責任を取ってくれない

会社員時代には上司や先輩が存在していたはずだ。起業して社長になると、その組織のトップは自分ということになり、上司や先輩は存在しない。あらゆる責任が自分のところまで回ってくるうえ、些細なミスなら大したことなかった会社時代と違い、自分の意思決定は鎮火にも炎上にもなる。そして、辞めるという選択肢は基本的には存在しないため、責任は取っても辞めることはできない。会社員時代に君が無事に存在できたのは、立場を準備してくれた会社や上司の存在だと知り感謝する。まずは謙虚になれるのだ。 

お金の不安がいつも付きまとう

事業を開始するのに十分な資金を用意できる恵まれた環境の人は少ない。運良くはじめは資金に余力があったとしても、雇用や納税によって瞬時に残高は減っていく。経済活動の全てにお金がかかっており、会社は存在しているだけで多額の金がかかる。キャッシュの勉強をしてもキャッシュは増えない。お金のありがたみと大切に使うことの精神が鍛えられる。

事業にトラブルはつきもの

事業を開始すると、まるで異質なトラブルが発生する。PC等のトラブルにしても、専門業者が常に待機してくれているわけではないため、自力で回復させる必要がある。業務多忙な日に従業員が風邪で休むと、自ら対策しなければならない。閉店して対応することはBtoBでは絶対にできない。何とかする力が身につく。図太さも。

取引先と対等に付き合えない

会社員は相手も会社員だということを理解しているため、「こいつにすべてを任せる」ということは基本的にしない。あるとしたら口だけだ。よって、「自分は組織の歯車なんで上司に確認しないと無理っすよ~」的な弱腰でヘラヘラ飲み屋でお付き合いしておけば気分は対等なのだが、経営者は違う。譲歩は自己の利益を減らし、強欲は事業の命を短くする。値決めの最良ラインを押さえることが必要なため、ビジネスで対等は存在しない。Win-Winも誰かが多く取っており、公平な分配は幻想だ。しかし、心構えだけは対等・公平でいようという優れた精神性が身につく。

人が集まらない

組織に所属していれば勝手に人が減っては増える感覚になる。採用も、退職も、自分の裁量は大きく影響していないからだ。しかし事業主となると、全ての人事に決定権が及ぶ。当然、採用するしないだけではなく、まず人が来ないという状態は必ず経験する。ともに歩んできた創業メンバーたちに大きな負担を負わせてExitされてしまうとベンチャー企業なら一発で消滅するだろう。是が非でも人員確保しなければならないのに人が来ない場合、どうすれば人が集まるか、どんな会社なら応募してくれるのか。労働環境に対するリテラシーが高まる。いままで偉そうにしていたメンバーに感謝が溢れ、人格が磨かれ、優しい人間になる。

倒産の恐怖がいつもある

些細な事、例えば顧客からの注文や問合せが少し減ったとき、ホームページのアクセスがいきなり落ち込んだ時、大切な社員に辞めると言われた時、多額の納税通知書が届いたとき、金融機関に融資を却下された時。様々なシーンで常に倒産の文字がチラつく。未来のことはだれにもわからない。過去自分がどれだけ頑張ってきたか、将来を恐れて踏み出さない方が愚かであると繰り返し自分に言い聞かす。そうしているうちに自分が好きになってくる。大丈夫大丈夫と思っていれば、案外大丈夫なことを知るのだ。日ごろの積み重ねがいかに大切かをよく理解できる。堕落とは強制的に決別できる。

言い訳は通用しない

経営上起こる出来事の全ては経営者に起因する。会社員の時は組織の文句や上司の決裁ミス、他部門へ責任をうまく擦り付けることができる。とにかく立派な言い訳さえしておけば、もしかしたら自分の評価は下がらないかもしれない。責任転嫁のロンダリングで責任を消滅させることだってできるかもしれない。しかし、経営者に言い訳はできない。事業の全ては自己に起因していることを突き付けられているからだ。よって、言い訳などせず、真摯に受け止め、反省し、今後同じことを繰り返さない骨太オトナの精神が身につく。

孤独である

経営者は孤独だという。間違いない。事業の成長の全てを担っているのだから当然だ。最高経営責任者というよりは、最終経営責任者のほうが中小企業社長の呼び名はしっくりくる。孤独だからこそ、沢山の信頼できる従業員や取引先、家族や友人が欲しいと強く願うため、吹けば飛ぶ屁のような権力に胡坐をかくことなく、謙虚に、勤勉さを求め、常に明るく務めるのだ。

無力すぎて泣く

組織ではハイパフォーマーだった人物も、経営者になるとうまくいかない。当然だ。何もないからだ。整備されたグラウンドで立派な道具を用意されているのと、全くの荒野では勝手が違いすぎる。自分が如何に恵まれており無知であったかこれほど痛感することはない。夜悔しくてすすり泣く。弱者であることを知り、あるものを探し、他人から学び、わずかな元手を最大に活用する知恵を絞る。なぜなら、それしかないからだ。モノやヒトを大切にすることを学ぶ。

 

ここまで読んだならすでに起業の鼻息はしずかになっているだろうが、こんなにもつらいことをすべての経営者は経験している。もしも君が起業に踏み出したのなら、燃える野心で踏み出す勇気と、謙虚な性格を兼ね備えた優れた人物になっていく。そんな人間が増えると私が霞む。もしも後輩の君の会社が私の会社より大きくなってしまったのなら、他人を気にして生きている私にはあまりに辛すぎる。だから起業だけはやめておけ。起業するのはやめてくれ。追い抜かないで。

 

 

既に起業してしまっていたら☟

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