働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

職場のハラスメント問題は起きてからでは解決しない

当社に訪れる一般相談の半数はハラスメントなど人間関係の相談だ。無視などの嫌がらせ、性的言動(下ネタ)の飛び交う職場、毎日飲み会、退職強要、金返さない上司、中には部下にキスされたなんていう香ばしい相談もあったが、本人は極めて深刻な悩みを抱えている。弁護士に相談しても相手にしてくれないとか、社内の監査部門に報告しても何ら改善がないと、結局辞めてしまう人が多いのがハラスメント問題の結末だろう。

私は中小企業の定着性を向上させ、企業の生産性を高め、利益の増大による一部を報酬として頂いている仕事柄、離職については私の利益の大元から絶たれてしまうため、自らのために企業にあーだこーだ言わなければ生きていけないが、未払い残業代などのように、基本的に数値化できるものと違って心的なものは大変な難しさがあり、なかなか解決したのかしていないのか自分でも満足な成果を得たことはほとんどなく非力さを感じている。やはり労働者側が勤務先の襟を正すためには自ら出世するか、もしくは団体交渉のような集団によるガバナンスへの圧力によるところしかないのだろうか。と思ったら、先日、トップマネジメントからセクハラ行為(女性職員からの通報)の疑いがある管理職の問題について相談があった。企業のトップがハラスメントを外部に相談する器量には大変感服したが、残念ながら事が起こってから慌てても現実的には解決しないのがセクハラ問題だ。何もしなければ従業員の信頼を失うし、感情任せに処分を下せば今度はセクハラの行為者自身から会社を訴えられてしまうドツボにはまる。職場の秩序維持には下準備が必要だが悩ましいのが、行為は悪だが仕事はできると事業主側でも思い込んでいるところにある。セクハラ野郎なんてクビにすればいいと断じて済むほど経営は単純ではない。仕事できない新入社員たち、将来の幹部たちの成長を見ることなく離職してしまう即効性の高さで事業は大きく機会損失しているとはまともな事業主なら当然に理解しているが、その日まで待てないのが中小企業。本来異なるはずのどっちを取るかの二元論になりがちなのがつらい。まずハラスメントを平気で行うような下衆な精神性(教養ともいう)を持った人間を上位職に任命してはいけないという根本的問題は今後反省するとして、社歴が長く、貢献度も高く、要職に据えた人間のハラスメントに対する処分は事業運営の観点から悩ましいのは当然だ。知恵もあるため、『この程度ならばセーフ』というラインを知っていて行っている可能性もあり、そのラインが部下たちと乖離してしまっている場合に常にハラスメントは発生している。つまりは、自分に甘い、もしくはいつの間にか甘くなってしまった点に一つの根源がある。言っても遅いが、このレベルはアウトと踏みとどまる上司と、この程度なら許せるという部下のお互いのギャップが常に重なっていなければどこかの隙間でハラスメントは発生する。オヤジだとか、キモイとかいった類のものではなく、教育されなかった大人が地位を得ると性格が歪むのは今昔普遍の人間の業の深さ。と言ってしまうと終わるので、経営上の対策についてよく考えてみたい。優れた会社ではそもそも教育も、対策もきっちり行っているが、中小企業レベルで本気でハラスメント撲滅に取り組んでいる企業は残念ながら見たことがない。多くは口ばっかりか、事実をなかったことにしてキラキラ職場を装飾しているのが現実だ。しかし私たち経営者は、ベストな環境を用意し、従業員の気分を害することなくできれば機嫌よく、全ての従業員に限られた時間で最高のパフォーマンスを発揮していただき、何もしていないくせに利益をかすめ取るのが責務だ。優秀な従業員たちがハラスメントによってモチベーションを下げ、離職し、部下のいない管理職だけが残るという寂しい結末だけは避けたい。そしてあきらめるのは未だ早い。トップの考えが変われば職場は変わる。さあ経営者たちよ、職場からハラスメントを撲滅し、全ての従業員達にいきいきと、最高のパフォーマンスを発揮していただき、高モチベーション、高生産性、高利益率、高役員報酬で私腹を肥やせる夢のような会社を実現するのだ!!

まずは就業規則を強化しよう。ハラスメントの撲滅は就業規則の変更なしでは語れない。繰り返すが就業規則の処分規定なしに行為者を解雇などしてしまうと処分に合理性なく解雇無効、逆に訴えられて大変な目にあう。しかし喜ばしいことにハラスメントによる懲戒規定の強化は基本的にだれも反対しない。規則が強化されるのに誰も反対しない不思議な現象がおきるのがハラスメント規則だ。しかし規則に明文化するだけでまだ誰も処分したわけではないのでどんどん進めてよろし。部下にキス強要したら解雇と書いてもよろし。特に下位職者に対する性的言動の禁止は職場内外に範囲を広げ、ついでに長時間の詰問も、大声の叱責も、人間関係からの切り離し(無視)も、就業時間外の会食強要だって全部禁止事項に盛り込んじゃえ。

個別具体的に、処分の範囲、処分の程度を規則上明文化し、社内にどどんと張り出すなどして周知(脅し)するのだ。これだけでも本気度マックスで極めて高い効果がある。就業規則の懲戒事由に盛り込み、注意し、顛末書を書かせ、始末書を書かせ、減給し、クビにする懲戒プロセスの王道は踏まなければならないが、調子に乗って反省しないやつはこのレール行きにすると宣言するのだ。受けた側がハラスメントならハラスメントなのでもしかするとカラオケに誘っただけでもレールに乗ってしまう可能性があるがやむを得ない。不器用でキモいカラオケ大好きな上司一人より、不幸な従業員を救うのが先決だ。併せて口の堅い人間に相談窓口を担当させるのと、外部専門家の第三者意見との突合など、事務的処理が可能な体制構築も図れれば尚ベターだ。

お山の大将たちは震えあがり、マイクを諦め、口数が減ることは間違いないが、鬱陶しい上司の口数が減るということは、平社員や若者たちが安心して働くことが出来る。そして、今度は虐められた若者たちによるオジサンへの報復が始まる。この繰り返す副作用をパワーバランスと呼ぶのだ。オジサン(オバサン)たちも若者たちもできるだけ愛される大人になれるよう、今のうちに自分本位の行為を慎み、襟を正し、学び、誠実に生きなければ寂しい老後が長くなる。そういえば私もオジサンだ。既に歪んでいたならだれかクビにしてくれ。カラオケ行きたい。

 

 

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