働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

43歳姉、就職す。

15年以上の長きにわたって専業主婦であった姉が就職した。

3人の子育ても少し落ち着きついに働くと言い出した姉は、テレビと漫画のみの娯楽とついに決別し、根気強く活字を読むことに伴う激しいアレルギー反応(眠気)に耐えて医療事務資格まで取得してしまった。すごいぞ姉。偉いぞ姉。しかし世の中は甘くない。資格を取っただけで安泰など幻想なことをあらゆる実業家は知っているが姉は未だ知らない。長期キャリアロスのある40オーバー謎の主婦をいきなり正社員で採用する会社など存在しない。かと思ったら、自宅近くの病院にあっさり正社員として採用されてしまった。子供を通わせていた関係でお声がけいただいたらしい。なんという運、そして素晴らしい先生。医師の聖職たるゆえんはわけわからないやつを採用できる懐の厚さにもあるのだと。先生ありがとうございます。しかし残念ながら、姉は社会の冷たさを知らずに大人になってしまった典型で、非常に打たれ弱いのです。少しでも厳しい言われ方をすると激しく傷つき、いちいち深く落ち込んでしまうのです。そして子供に慰められて翌日には忘れてしまうような扱いづらい人間なのです。しかし姉はとても良い奴だ。長年弟をしている私が言うのだから間違いない。

さて病院にも当然、様々な人たちが働いているわけで、悪意の有無にかかわらず傷心は避けることが出来ない。優しすぎる無能にとっては悲劇の準備が整っている。さあ聞いてみよう。

やっぱり連日輪に入ることが出来ず、孤立に傷心しているという。そしてやっぱりビジネスの基礎訓練が出来ていない純粋さは新卒レベルで、せっかくの諸先輩方の指導に適切な返事のできない愚か者感を炸裂させてさらに孤立を深めている。

私は新入社員の返事は3つしか許されていないと昔教えられた。

「わかりました」

「ありがとうございます」

「やってみます」

以上だ。

業務上のすべての指示、指導に対しては3つの中から回答しなければならないし、回答できる人間は円滑な人間関係を構築していく。能力などなくても返事さえよければ仕事できると勝手に相手は思ってくれる。裏を返せば、返事の下手クソな人間はどんな立派な出生でもゴミ扱いされる。要は、返事良ければすべてよし。営業マンはそう生きろと言われたし、サラリーパーソンの基礎スキルであると腑に落ちている。しかし残念ながら姉は、

「わかりません」

「聞いてません」

「教えてもらってないのでできません」

「さっき言われたことと違います」

「前はこう教わりました」

「私がやるんですか」

「院長はこう言ってました」

など最高に嫌われるゴミ社員ワードを口にするところもマイルドヤンキー丸出しで自己中心的。本当にいい奴なのだろうか。しかし世界は美しく、また他人はすべて自分に優しくあるべきと信じている愚か者がわが愛する姉なのだ。意地悪で怖い先輩も、阿呆な上司も、冷たい他人もすべては相手に問題があり、自分が作りだしているかもしれないことを疑わない。

よく聞け新入社員。返事は、

「わかりました」

「ありがとうございます」

「やってみます」

以上だ。

 新入社員はこの返事だけマスターすれば、先輩たちからも可愛がられる。可愛がられなければ辞めちまえ。いつか出世したら解雇してやれ。

 

 

RESUS社会保険労務士事務所

山田 雅人