オフィスの掃除は誰がすべきか
わが社では社長である私が事務所を清掃している。
偉いねとか、手伝いますとか、社長自ら掃除するなんて信じられないなどと社員様から温かいお言葉をいただくことがあるが、実は私が偉いわけではない。掃除は好きでも嫌いでもない。だが手伝ってくださるのは迷惑だ。
私が20代の小僧だったころに勤めていた不動産会社は営業時間前、つまり開店の時間までに店舗の隅々はもちろん表の道路まで綺麗に掃除するよう偉い人から指示されていた。なぜか会社の始業時間は開店時間である9時なのに。その前に勤めていた飲食店のアルバイト先は閉店後にみんなで掃除をして帰る。その後勤めた会社では9時半の始業と同時に始まる朝礼後から週に一度、みんなでダラダラと15分程度の掃除を行っていた。
いろんな掃除があるが大切なことなのでわざわざ言う。労働法上は事業所の掃除時間は労働時間とされている。つまりは賃金支払い義務の発生する時間である。そして事業主には労働安全衛生法によって事業場を清潔に保つよう義務付けられているため、程度はあれど必ず掃除はしなければならない。
となると、大きく分けると事業主の選択肢は3つ。
①金を払って社員に掃除させる
②金を払って業者に掃除させる
③自分で掃除する
清潔さが売上を大きく左右するような飲食店等は別として、お掃除大好き松下幸之助翁の経営論で育った世代はなかなか掃除を外注する気になれない。
法人という区分は問わず組織の場合、自分という主体は労働法上の管理監督者(法41条)、つまりは偉い(はずの)人間ということになる。
わが社のような零細企業で労働法上の管理監督者に明確に該当するのは社長である私ただ一人だけになるため、わが社は掃除に金を使わない選択肢を消去法で選んでいるだけの事なのだ。よけいな思案はやめてそっとしておいてほしい。知れば此奴はケチな奴だと気付かれる。
みんなで掃除という崇高な共同作業によってモチベーションを高めるとか、
整理整頓の習慣が合理的思考を磨き個々の能力を高めるとか、
成功者はみな掃除好きとか
いろんな意見があるがその前に、わが社だけではなく大阪で働く従業員は一時間936円以上かかる。夜10時から朝5時までなら1170円以上かかるのだ。(2019年大阪府最低賃金)
生産性にうるさい今の時代に皆様の会社は掃除にその価値以上を見出しているか。まさかタダで掃除させている会社はあるまい。