働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

久しぶりのお友達は90連休中

久しく音信不通だった年下の友人が突然立ち寄ってくれた。

僕の中でも指折りの元気な若者で、他社とはいえそれなりにそこそこ可愛がっていた。

そんな友人も30歳の大台を迎え、人生何があるかわからんですねと笑いながらの報告は退職だった。

そこまではよくある話。

何と60日間の有給休暇と休日でのんびり過ごしているらしい。有給休暇60日?40日じゃないの?

私としたことが、すっかりうっかりしていた。

有給休暇には付与日という基準日があり、その日が訪れると自動的に有給休暇の権利は発生する。6年6か月を経過するとフルタイム社員であれば20日が毎年付与され、付与された年に使いきれなかった分は翌年に繰り越しされる。10年以上フルタイム以上に勤めあげ、さらに有給を一切消化しなかった頑張り屋さんの彼は40日の有給権利がキープされており、ちょうど40日を消化するタイミングで付与日が到達するように調整すれば、あららびっくり60日の有給休暇の出来上がり。そうか、有給休暇の最長は60日なのだ。そして、事業主側で抗う方法は無いのが退職までの有給休暇。社長がわめいても勝手に発生する。賃金を払わない暴挙に出る経営者も存在するらしいが、弁護士先生にオイシイ仕事を与えるだけなのでやめたほうがいい。

 会社の所定休日に60日の有給休暇を合わせれば、ざっくり計算しても3ヵ月ほどは給料をもらいながら休めちゃう。休ませてもらえなかった哀しい労働者が最後に得る長期有給休暇。スグ先で安定収入を失う事が決まっている長期休暇は全力で喜べない。また、3か月後からの勤務希望者に内定を出す根性の座った企業はなかなか無い。その長期有給休暇は誰が得するのだろう。折角の権利を捨ててしまうのも勿体ない。

年次有給休暇の趣旨は労働者の心身の疲労を癒すためで、疲れたら休む。換言すれば、しっかり休んだならまた働けという意味でもある。法律を制定した時には当然のように皆が権利を行使すると疑いなく想定しており、まさか退職を決意するまで使えない(使わない)労働者がこんなにも発生してしまうことは想定していなかったと聞いたことがある。つまり、退職者の有給休暇は法の趣旨とずれている。ずらしたのはもちろん、ずれた感覚の事業主だ。

いつも申し上げるが、事業主の経営戦略上、退職者の有給消化は会社に何の得もない。ただ黙って有給を消化させなかったことを後悔しているのならば救いようもあるが、なぜかプンプン怒っている経営者の方が多い。

 わが社は趣旨をしっかり理解して、きっちり年度内に有給の全消化をクリアし繰り越しさせないようにしているので、退職日まで3ヵ月も籍だけ残る奇妙な幽霊社員を抱えることはまずないが、怒っている経営者たちにはそろそろ鉄槌が下される時期に差し掛かっている。有給休暇ごときを消化できない企業には誰も入社してくれないぜ。

私個人としては、退職者が次の生活にスイッチするまでに1か月くらいの猶予期間はあってもよいかなと思っているが、暇な時期には1か月くらい連続で休暇を取得し、また働いてくれるのが一番いい。

いろんな屁理屈で消化させないように頑張っている愚かな経営者も多いが、そんな無駄なことを考える暇があれば有給休暇を消化させる方法に頭を使う方が賢い。

有給休暇を毎年全消化させることもなかなか難しい。悪い頭の体操ならば、賢く使いたい。

日ごろから有給休暇を消化させておく以外に、退職者の長期有給休暇を拒否する方法は無い。

友人よ。次こそは休日くらいまともな会社に勤めなさい。 

 

 

RESUS社会保険労務士事務所

山田 雅人