働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

未払い賃金時効延長のインパクト

既に公布された民法改正に併せて労働基準法も改正の準備が進められている。

 

厚生労働省が2020年までに未払い賃金や有給休暇の消滅時効を2年から5年に改めるべく検討会を立ち上げ、本年度中に方針を取りまとめるようだ。

 

専門家さんたちのコメントを見ていると、労基法改正は確実に進むとする意見が多いし、私もそう思う。

 

実は私の経験上、中小企業で自信をもってクリーンな会社(賃金未払いが存在しない会社)と言い切る人事担当や役員とは会ったことがない。誇らしくブラックを自慢するカス役員もいた。

 

ということで、計算方法を知らなかったり、ミスや考え方などで、どの会社にも大なり小なり未払い賃金があると私は思っている。

 

(実は私の会社も以前調査したところ未払いがあった。)

 

未払い賃金回収は、過払い金請求の次にトレンディな市場となることは記憶しておいたほうがよい。

 

現行法では未払い賃金といってもせいぜい100万円程度が通常ではあるが、この改正で額は単純計算で2.5倍になる。弁護士報酬を3割とすると、百万円近い収入となり、立派な食い扶持になる。いままで少額で取り合わなかった高尚な先生方が一転し、期待に胸を膨らませ奪いあうのだ。

 

よって長期勤続者からの相談は確実に上客扱いされる。相談無料は当然で、交通費まで払ってくれるかもしれない。

 

なお認知度が高いとは言えないが、費用も安く手間も少ないADR裁判外紛争解決手続)という方法もあり、一部を除く労働関係のいざこざは『特定』を付記された社会保険労務士ならば取り扱いできる。あまりことを荒立てたくないが、泣き寝入りも嫌だし、穏やかに解決したい場合は検討するのもよい。

 

もちろん悪いのは賃金を支払わない会社なので、先生達は一生懸命がんばって悪しき経営者を駆逐してほしい。

 

ところが経営者が未払い金を払うだけでは終わらない。

 

打撃を受けてなお生き残った経営陣は、受けたダメージを従業員へ還元する。

 

従順だったはずの従業員の裏切りに怒り狂う社長は、ほかの従業員達も同じ疑いの目を向ける。経営は信用を基礎とすべきなのに、疑い始めて自由を奪い、硬直し、息苦しい組織が形成されてく。嗚呼。

 

 なんとも不幸で涙が出そうなので、この記事を発見し読み進めていただいた優れた知見を持つ経営者様は是非、自身の会社にまず疑問をもち、調査し、改善する行動で紛争にならないよう準備してほしい。

 

もしも自己調査で未払いが発覚した場合は決して隠さず、従業員への謝罪と返金、社会保険料など適切処理する姿勢を速やかに文書で公開したほうがよいのは言うまでもない。危機対策を誤るとどこかのエアバック会社のようになる。

 

では危険な考え方の例を。

 

①社労士にお任せでよくわからない会社

 

②固定残業代で安心しきっている会社

 

③高水準の給与待遇で自信満々の会社

 

④かかってこいやと強気な会社

 

以上は極めて危険な会社だ。未払い賃金が潜在している可能性が高い。

 

ちなみに、タイムカードなどの労働帳簿の保存期間は法定上3年で、労基法が改正されたならば未払い賃金の時効にやや足りない。5年は保存しておいたほうがよさそうだ。

 

 帳簿類を作成していなかったり、保存していなかったりすると紛争となった場合対抗手段がなく、労働者の言い分が全て通ってしまうおそれがあるから要注意だ。裏を返せば帳簿類が無い会社には何を要求しても通ってしまうと悪だくみしてしまう可能性もある。額がでかいとなんだってやってしまうのが人間の偉大なところだ。

 

今のうちから備えておかないと、あとで取り返しのつかないことになる。

 

紛争に備えることは、紛争を予防することだ。

 

 みんなちゃんとしよう。未払い賃金回収ビジネスはこれからアツい。

 

今後は皆が楽しく豊かに働けることに経営者の喜びを見いだそう。肥えてしまった私腹は絞って健康になろう。

 

 自ら動こう。内容証明が届く前に。

 

(書いた人)

特定じゃない社会保険労務士

山田 雅人

yamada@resus.co.jp