働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

働き方改革について思うこと

急激に拡大していく働き方改革。

 

様々な議論が取り交わされているが、私個人的には『大賛成』だ。

 

私は不動産会社向け事務代行サービス等を提供する会社を経営しており、また個人で社会保険労務士事務所を経営している。

 

私にとっては、働かせ方改革である。

 

話題の多い同一労働同一賃金も、反対するのは優遇されている側で、不遇されている側は賛成多数だと思う。

 

しかし極論、均等待遇が行き過ぎると共産的になり、昇降の刺激のない組織となり芽が育たない。

 

 それでも、改革のブレーキタイミングなど長期的な是正は今後の問題として、直近で長時間労働や不利益取扱されて苦しむ労働者の改善には世論から変えて経営者に心的圧力をかけていくことが一番よい。労働法遵守の常識化はとても良い。少しずつでも変わっていくことは働く人たちの希望にもなる。

 

さて、働かせ方改革においては、適正な評価制度が絶対に欠かせない。

 

公正な評価制度を公開することで、従業員たちは納得する。

 

では当社の例。

 

 同じチームの全員でリーダーを評価し、また同僚同士で評価し、総点によって昇降を決定する。リーダーは民主的方法で選出され、また降格させることができる。

 

具体的には、40項目程度の設問を用意し、過半を人格的設問、残りを職能的設問に設定し、10点満点の評価をそれぞれ付してゆく。職位によって設問内容を変える。

 (リーダーならば部下の模範となる行動であるか。等)

 

集計した評価と役員評価を合計し、項目ごとの平均を算出して総点を決定する。

 

なお、他人の評価には訓練が必要であるため、最低限の心理的傾向に注意説明を行う。

 

簡単に言うと、

 

●好き嫌いや印象で評価しない

メリハリのない評価を避ける

●自分を基準としない

●良い部分・悪い部分に他項目が影響を受けないように

●通年単位基準であることに注意する

●他の評価者ならどの点とするかを考える

 

等だ。

 

当社は若年が多いため平易な表現で注意を印象づけるよう心掛ける。(ハロー効果や期末誤差など専門用語をわざわざ使わない)

 

また、自己や他者を酷評するなど非適正な判定を行う者や、注意事項を無視した評点を行う者には役員評価から減点する旨など、評価するものは評価されている点についても十分に説明も行う。

 

本制度は大変な労力と時間がかかるものではあるが、評価に真剣に取り組む会社の姿勢が従業員にアピールできる。また上司の一存で決定する一般的な評価制度の不満を分散できる様々な利点がある。

 

(被評価者)

①評価者と近い人間が高い評価を得る。

②上位職が評価制度に知識がない

③評価制度が公開されておらず内密に行われている不満

④上司に嫌われると出世は無い

⑤結果がわかりきっており緊張感がない

 

(評価者)

①部下の評価を熱心に行っても自己の評価にならない

②被評価者のことをよくわからない

③評価にかかる時間的負担が大きい

④嫌われたくないので横並びの評価になる

⑤技術者でありマネジメントに興味がない

 

評価結果の内容をみて総点を算出し社内掲示板に公開する。総点の結果によって昇給予算の割り当てを行う。

 

雇用契約は保護されるべき約束ではあるが、特段の取り決めがない限り昇給は経営者に裁量がある。

 

 そこで、当社では『単年固定給(変動部分)』として基本給に評価給を上乗せする2階建て方式を実施している。

 

 こうすることで、積極的に昇給を実施できる。社労士や税理士等専門家は顧問先に対して賃金改定に慎重な指導を行っており、中小企業における昇給は1%程度あればよいほうと推察されるが、当社は今期平均7%以上の昇給を実施した。

 

 経営者は誰でも、労働契約を労働者に不利益となる変更を行う場合は無効となるかもしれない事を知っている。よってそれなりに詳しい経営者にとっては賃金は一度決定すると変更できないものであり、未来の業績不振を過度に恐れるあまり昇給は大変ハードルが高い。上げたいけど上げられない。と言い訳する経営者も多い(嘘つけと思うが)。結果的には、

 

「下げられないから上げない」、という心理に支配される。

 

私は「下がるかもしれないけど上げる」

 

ほうが働く側にとって面白いと思うし、どちらも基本ベースは同じだ。

 

 もちろん適法に実施するためには就業規則に記載義務のある昇給だけでなく、降給の事項を盛り込む必要があるし、雇用契約の改定には十分文書での説明と理解が必要になる。

 

 今後の労働市場は確実に労働力が不足し、労働力の獲得、維持には相当なコストがかかる。またキャリアコンサルタント等が他社紹介や引き抜きによって労働力をさらに流動化させていく。

 

しかしそれでも、従業員を維持できない会社は容赦なく淘汰されていく。よいサービスであったとしても。

 

人材の不足している職場は皆全員が苦しい。

 

 働き方改革は時代の潮流であり抗うことはできないが、時短や業務委託として様々な働き方が選択できる土壌はいまのうちから準備しておいたほうがよい。

 

準備を怠ると経営は成り立たなくなる。働き方改革は経営者にとって考えるよい機会であり、危機感を持って取り組むべきだ。知らないは許されない。

 

 

※完璧な評価制度は存在しません。評価制度は職場の実態に合わせて少しづつ工夫を重ねながら改編していきましょう。

 

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RESUS社会保険労務士事務所

代表 山田 雅人

yamada@resus.co.jp