働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

不動産業界は稼げる!?

不動産業界と言われればどのようなイメージだろうか。

 

キツいけど稼げる。

 

10年前はこう言われていた。現在は実際どうだろう。

 

当時の不動産会社で稼げると謳われていた仕組みはフルコミッション、通称「フルコミ」によるものだった。

 

フルコミとは、自身の売上から約35%程度の比率で報酬を受け取るシステムだ。

 

私が業界にいた10年前はかなり多くの会社でフルコミが実施されていた。

 

裏を返せば、売上がないと給与はゼロとなる。

 

給与袋が立ったとか、帯付きの札束を持ち歩いて繁華街に行くなど派手な話もよく耳にしたが、さてなぜ最近はめっきり聞かない。謙虚になったからだろうか。

 

労働基準法第27条にはこう記載されている。

 

出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」

 

つまり、売上ゼロ社員にも会社は労働時間分に応対する賃金は支払う義務がある。当然、実質労働時間から算出した額が最低賃金法に抵触することはできない。

 (一定額の保障給といいますが、どれくらいが最低の保障給かは割愛します)

 

こうなると、経営者としてはたまたま売り上げが上がった月にたくさん給与を支払い、全く上がらない月も最低分は保障しなければならないのだからたまったものではない。

売買の世界では売上ゼロなんていうのはざらにある。 

 

よって比率は下げるのが当然のなりゆきとなる。

 

さて、ではなぜ10年前はまかり通っていたのだろうか。

 

それは、法違反であったとしても不動産業界は実際にたくさんもらえている人間が(まだ)多かった。売買仲介など調子が良ければ月給が1000万円なんていう猛者もいた。満足が不満を上回っている場合は、声を大にして不満を訴えるものは少ない。

 

現在のコミッション率は多い会社でも15%程度。30%を超える場合は経営が成り立たない。あるならどういう給与制度か知りたい。

 

 現在のように業界全体が活況とは言えない時代は売上が上がるのはごくごく一部の人間だけで、大半の営業マンは売上が上がらないし、またいろいろな雑務を抱えておりなかなか専念できない。

 

不動産会社もコンプライアンス(法令順守)の考えが浸透しつつあり、労務管理も同様に法令違反は看過されない。不動産会社は今後稼ぎづらい給与構造になる。固定給が強制発生するとはそういうことだ。

 

 今後は売上の毎月リセットを廃止して、1年程度の長期で見ていく構造でなければ営業マンが続かない。会社も個人主義から全体主義へシフトし、評価制度や規則類の整備を進め、また店舗毎の会計へシフトし、事務部門や経理など必要な機能は本社管理として分担するなど合理的な構造改革を図らなければならない。また、小規模事業者は細部にいたる管理業務や土地開発等不動産コンサルティング業務へ軸足をシフトし、多店舗展開している業者は仲介に特化し、法人客や外国人など幅広い取引ができる営業マンを育てなければならない。 また、営業でなくてもできる業務(賃貸ならば事務作業や採寸立会、重要事項説明など山ほどある)は分業して他人に任せ、負担を軽減すべきだ。 

 

 いまだに『稼げる』をうたう不動産会社は法違反がツーンと匂う。

 

RESUS社会保険労務士事務所

山田

yamada@resus.co.jp