働くことに思うこと

新大阪で起業した男の顚末まで

バックマージンという病

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バックマージン。それは甘い囁き。

バックマージンはあなたの周りに確かに存在するが、目には見えない。

その携帯にも、その服にも、あの広告にも、どこにでも存在している亡霊。

 

そう。バックマージンとは、リベートやキックバックなどとも呼ばれる、取引の第三者に紹介料やコンサルティング料などといった名目でこっそり支払いされるお金だ。亡霊ではない。

 

皆さまはバックマージンを知っているでしょうか。

バックマージンを要求したり、受け取ったりしていませんでしょうか。

  

仕入原価や人件費、その他ビジネスに必要な原価を算出したうえで顧客から料金をいただくことが商売の原則だが、バックマージンを認容するとその分をさらに上乗せして顧客に支払ってもらわなければならない。

 

ブローカーと言われる人たちはバックマージンで儲けているから負のイメージがある。

 

僕も不動産業界が長かったが、あらゆるお金にバックマージンが絡んでいて、入居者や買主などの顧客からいただく手数料報酬が主な原資だ。顧客もバックマージンで貯めた金を使うのならばいいけれど、そうでもない人がほとんどだ。

いわばバックマージンは大小あれど顧客を欺く行為で、営業的には禁じ手だ。わかっていなければ目を覚ました方がいい。

はじめは負い目のあったバックマージンも慣れて麻痺してしまうと平気になる。

中には個人で受け取りたい輩も存在するが、これは背任や横領といった立派な犯罪行為になり得る。

ちなみに、私も若いころは地主に取引の謝礼として商品券や現金を受け取ったことがあるので、無知とはいえ私も手を染めていた。

 

それ自体はただちに違法ではないが、顧客に公開できない闇取引。長生きしたければ誰に見られても胸を張れる仕事以外はしてはいけない。必ず後でさらに苦しいことが待っている。ややこしい奴だったら最悪で、たかられたり脅されたりして末路を想像するのも恐ろしい。

 

事業とは、 お互いの信頼関係を基礎として成立している。

 

僕はバックマージンを要求してくる輩とは取引しない。その内容を取引関係者に開示しているのであれば構わない。情報社会の商売は公開を原則としなければならない。隠してもどうせバレるから。マージン取られて疑わない奴は金なんて持ってない。

 

適正なマージンとは、公開されていることに尽きる。率の問題ではない。

 

関わらないほうが身のため、大切な会社のため。

 

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RESUS社会保険労務士事務所

山田 雅人

 

 

辞めればいいやんなんて言えないよ

働く人たちは皆それぞれ悩みを抱えて働いている。

僕は少しでもそんな人たちの役に立ちたいと思って会社を創業したけれど、40にして惑いまくっている。

僕が休日に実施している労務相談は法律を勉強したつもりの僕が悩める労働者や新米経営者たちにありがたいお話をしてズバッと解決してやろうと開始したのだけれど、ごう慢なおごりだった。全然ズバッと解決できてない。

パワハラで悩んでいる若い社員にも、今後改善するかもしれない会社に対して、その会社が法律違反しているから辞めた方がいいなんてはっきり言ってしまっていいのだろうか。辞める以外の方法は出し尽くしただろうかと悩む。

大手企業で立派な肩書きもある人が独立の相談にきても、自信をもって背中を押してあげればいいとも思うけれど、起業はそんなに甘くない。果たしてこの人はやっていけるのだろうか、と考えると、止めたほうがいいと思ってしまう。

飲食店の開業なんて絶対にやめた方がいいと思っているけれど、熱意も愛嬌もあってもしかしたらいけるんじゃないかなんて思ってしまう。

物差しは結局皆それぞれにあるもので、助言じゃなくて意見を聞きたいだけだから、あまり自分と重ねないようにした方がいいのだろう。

会社なんて辞めて自由に生きればいいやん、昔はそう思っていたし、僕自身もいつでも辞めれるように辞表はカバンに入れていたけれど、ひどいパワハラも、超長時間労働も、無給休日出勤も、賃金未払いも、リストラも、今思えば(辞めさせられる前に)辞めなくてよかったと思っている。苦労は買ってでもしろと昔の人は言っていた意味がよくわかる。逃げ続ける人生には必ず行き止まりが来る。はず。

僕は特別だと自分で思っているし、人はそれぞれ当然に特別な存在で、それぞれの長い人生には自分以外で責任を取ってくれる人はいない。

会社員時代に部下が病気で苦しんでいたときも、喉元まで来る言葉が言えなかった。辞めてもいい社員なんていなくて、それぞれに役割があって、辞めて良かったと思える将来が待っているだろうか。苦しんでいるなら開放してあげた方がいいのかもしれないけれどやっぱり言えない。

辞めた後の責任はとれないし、辞めなかった事の責任だってとれない。

君の人生は無限かもしれないし、有限かもしれない。無限の可能性は明るいばかりではない。

辞めずに頑張ってもいいことなんてないかもしれないし、大した技術もない人間が他社で活躍できるとも思えない。優秀な人間もその会社での話で、他社でも優秀かどうかはわからない。

辞めて良い結果が出ればいいけれども、僕は辞めなかったことに満足している。

人生は選択の連続だとは言うけれど、その分かれた道の先は未知で、もっと苦しいことが訪れたときにまだ逃げ出せる選択肢は残っているだろうか。

人生は失敗ばかりだけれど、その失敗の積み重ねが大きな成功を引き寄せる。

どんなに苦しくても、辞めればいいとは限らない。

 禍福は糾える縄の如し。縄と蝿は似た漢字。

 

 

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社会人はなぜ時間を守らなければならないのか

 

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社会人はなぜ時間を守らなければならないか。

 

時間を守れと上司から口酸っぱく言われ続けていると思うが、なぜ守らなければならないかと逆に聞いてみれば、たぶん「常識や」と一蹴される。

 

社会人の大半を占める会社員。会社員は労働契約で会社とつながっている。

 

会社員はその「時間」を会社に提供し、その対価として給料を受け取っている。みんなが大好きな労働基準法も実は労働時間の長さについて規制しており、これが労働契約の基本だ。

 

よって契約した時間の一部でも提供しなかった場合には、契約違反となる。

 

だから時間は守らなければならない。そう約束している。

 

まるで優れた能力を買われていると勘違いした労働者はどこの会社にもいるが、労働者は能力を基準に対価を支払われているわけではない。労務に服した「時間」を基準に対価が支払われている。

 

とはいえ、時々とんでもない仕事をやってのけ続ける労働者もいるので、そういう人間は早く能力を引っ提げて独立してほしい。

 

もしも優れた能力を持っていると自信があり、その能力を買ってほしいのならば、労働契約を解除し、その成果に応じて支払われる業務委託でもなんでもいいから契約をやり直せばいいのだ。能力があれば買ってくれる。時間を守りたくない人も同様だ。

 

 さて、会社側も正しく労働契約を守っているだろうか。約束した時間以上に働かせていないだろうか。提供された時間に正しく対価を支払っているだろうか。

 

長々続く会議も、ありがたいお説教も、朝の掃除も、夜の飲み会も、会社の旅行も、待機時間だって賃金支払い義務の可能性があることを理解しているだろうか。まさか労働者の時間を奪っておいて、賃金を支払わないなど都合の良い解釈はあるまい。

 

能力が低いから対価を支払わないのは許されない。労働者に対して約束を守らない会社は常識を口にしてはいけない。

 

お互いに時間だけは守らなければならない。お互いに常識ある社会人なのだ。

 

 

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能力がないのに自由を欲すること

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当社は多様な働き方を推奨している。

 

代表の私自身も複数の法人に所属しているし、日替えのダブルワークや時短勤務で上手に働いている従業員もいる。

 

訳あってフルタイムで働けない優秀な人材を労働市場に戻すことや、副業、趣味、学問など社外での時間利用を通じて人物的に成長し、いつか当社に還元してもらうことが目的だ。

 

社会保険も当社は適用拡大の届け出を提出しているので、週20時間以上働いていれば社会保険に加入でき、万一働けなくなった時の保険もばっちりだ。

 

求人票にもそのことを謳っており、時短正社員希望で多数の応募者が来る。 

 

私たちは時間の許す限りできるだけ沢山の人と会うようにしているが、なんの努力もなしで自由ばかりを求めている人が多い気がする。

  

どんな特技があるかと聞いても答えられない人もいるし、パソコンも少し触れるレベルで、元気もないし暗いし、学生時代に研究していたというテーマなんかの質問をしても忘れていてこたえられない人もいる。現在熱意をもって取り組んでいることも無いし、過去の勤務先での成功や失敗、貴重な体験を聞いてもまるで答えられない大人が多くて憂いている。時短勤務に理由がない人もいた。

 

私は経営者なので、個人個人の隠れた才能をビジネスに活かし、社会に貢献してもらうことが責務だと思っているが、いくら時間を費やしても見いだせない人がたくさんいる。そして、そういう人も自由を求めている。

 

特技もなく、苦労もなく、資格もなく、勉強してスキルを磨くこともなく、それでも自由を欲している人達は実に危ういと思う。

 

人は総じて自由を求める生き物だとは理解しているが、働くという尊い行為を否定し、自由だけを求めることができるのは成人するまでだ。

 

労働という時間を提供する行為ではなく、何か社会に付加価値を提供することのできる特技を極めて収入を確保することは大いに結構だと思うが、実家暮らしで何もできない大人が拘束を嫌い、自由を謳歌したいと考えていることは非常に危険な考え方で、数年たった時に現実を知りヒモジイ思いをするのは目に見えている。

 

ホリエモンや、ヒカキンや、その他自由に見える人たちも相当な苦労を積み重ね、勤勉さ、誠実さや行動力を身に着けており、そうでない人間が表面だけを見てマネしたがるのは恐ろしい。

 

まあ他人事だからいいとしても、自由を謳歌したいなら誰にもマネできない特技の一つでも磨き、それを社会に役立てていく強い行動力が必要だ。無い人間はわが社にも縁はない。

 

逃げて自由になることと、自由を切り拓くことは違う。

 

前者にならないように肝に銘じたい。

 

 

RESUS社会保険労務士事務所

山田 雅人

yamada@resus.co.jp

 

 

 

算定基礎届の手続き

社会保険料の算定基礎届手続きも無事完了した。

 

サラリーマンはほとんど知らないが、この時期は定時決定のための報酬月額の算定基礎届け出の時期なので、給与担当者は大変忙しい時期だったのだ。会社員の君たちは何の手続きもせずに勝手に給与が振り込まれているから無関心になっているが、年金保険料がどういう計算方法で決定して引き落としされているかぐらいは理解しておかないと大人になったときにゴミ社員扱いされるので嫌なら勉強しておいたほうがいい。外注してるからわからないという人事部ならば、残念だが自分で本でも買って勉強しよう。

 

さて、マイナンバー情報の交換によって国税社会保険庁が連動して調査がたやすくなるような話はずっとあるが、実際のところどうなんだろう。

 

さすがに未提出の会社は調査すると思われるが、私の友人の友人の友人の会社などは、社長の報酬月額をかなり少なく提出したり、社員たちの報酬も適当に届け出しているところも多いそうな。

 

年金に強い信頼のあった時代などはかなり多めに記載して提出しているところもあったらしいし、随時改定なんて無視しているところも沢山あるし、誰でも知っている札幌の大手企業は本来算入すべき手当のすべてを除外して算定届を提出していても20年以上もお咎め無しだったと開き直っていた(そして指摘された)ので、税務署と年金機構は調査能力に圧倒的差があると思う。

 

税金は国家運営の最重要なことに対して、年金などは国民に提供するサービス程度と考えているのか、相変わらず不祥事が多い。ウイルスメールを開いちゃったうっかり職員はともかく、事務処理を海外企業に委託しちゃったり、消えた年金はどないなったんじゃ。

  

さて、いまはちょうど繁忙期が定時決定の4~6月となる事業の場合は年間の平均を標準報酬月額とできる手続きなどもあるが、利用実態はどうなのだろう。

 

そもそも平均で手続きすればいいし、 標準報酬月額が階層になっているのもパソコンの無かったアナログ時代の事務簡略が目的だったというが、このデジタル時代にあいかわらず謎の制度が維持されているのはどういうことやと嘆きながら作業している。

 

私たち専業は平気だが、電子申請のイーガブ(e-Gov)なんて自他ともに認める使いずらさでどうやってらいいねんと相談に来る事業主もいる。私はそんなことでお金をもらいたくないしやりたくない。

 

生産性向上どうこういうのならば、事業主のこういう作業負担の軽減も考えてほしいとまた嘆く。

 

 

まあ終わったからいいけど。また呼び出しされませんように。

 

 

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社員10名が見えてくると見直しすること

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社員が増えてくるといろいろと検討すべきことが増えてくる。

 

もともとしっかり規則類を整備しているつもりでも、よくよく見なおすと穴があったり、改善しないといけないことは無限とおもえるほどたくさん出てくる。

 

会社の制度見直しする一つ目のラインは従業員10名を超えるタイミング。

次は50名を超えるタイミングで法律上の義務も変わってくるので、いま当社の社員は8名だけれどもそろそろ準備にとりかからないとあとでめんどくさいのだ。

 (従業員数によって変わる法律上の義務はまた改めます)

 

 創業時点でルール化したものも、日々の運用で気づくことがあり、一つ一つメモ書きしながらPCに保管していたのだが、安物のPCを使っていたせいと、私のPC知識の不足からデータが消滅してしまう忌々しき事態が発生してしまった。

 

社内のITインフラの面倒を見てくれている偉大な後輩様からは、「PCは壊れても初期化するな」という教訓を教わった。

 

そして、重要な知的財産は安全な場所に保管するように指示されたので、いまはグーグルワンドライブに保管している。これで安心。

 

さて、そんなこんなで面倒な社内制度を改めてシコシコと見直ししているのだけれど、これも若い経営者は準備不足が多くまた忘れがちなことなので参考にしていただきたい。

 

【社員10名がみえてくると見直しすること】

 

1.資金繰りの見直し

2.規則の見直し

3.社員教育制度の見直し

 

 なんと当たり前のことかと思うが、当たり前と思った経営者はまだ普通で、これが当たり前と思っていない新米経営者が驚くほど多いので、不安な方はじっくりと、当たり前と思う方はページをそっと閉じてもらいたい。

 

 事業活動を行う上で最重要なのは資金繰りだ。金がないと社員の給料も払えないし、新しいことを始めることもできない。金がないと誰も救えない。

 そこで、余裕があったとしても、一度キャッシュを見直ししてみる必要がある。儲かっている会社は感覚的に楽観的になりがちであるが、経営も人生も、何が起こるかわからない。万が一は、高確率で起こるものだ。

経営的には売り上げがいきなりゼロになったと仮定して、どれだけ耐え忍ぶことができるか。を再計算する。ちなみに、ゼロになってからでは資金調達はやや難度が高い。貸す側に立って考えれば理解できるが、売り上げが立っているうちに、十分な運転資金の調達を準備しておくことが必要だ。

最近は中小企業でも1%を切りそうなほどの低金利で運転資金を調達できる方法があるため、「万一」にも準備をしておくことが必要だ。

助成金も受給できるまで6か月以上の期間を要するが、忘れたころに口座に入金されていると嬉しい。必ず手続きしておくこと。

 

また、就業規則類も見直しする必要がある。就業規則の重要さは先のブログで何度も書いている通りなので参照してもらいたいが、

  

yamadaresus.hatenablog.com

 yamadaresus.hatenablog.com

 

 

当社の就業規則も見直しすべき点がちょこちょこ見つかっている。

 

例えば、

 

労災以外を原因とする病気休暇の扱いについて、別傷病なら通算するか、何日まで

 OKか、どの社員も同一にするか、復職時の手続きは厳しすぎないか。

有給届け出の事前届け出はいつまでをいうのか。規則に盛り込むべきか。

 喫煙の扱いは盛り込むべきか

 

など検討すべき事項が沢山あった。

そのほかにも良かれと思って実施している福利厚生制度も、利用者が少なかったり、特定の人員しか利用しないものは見直すか、廃止を検討しなければならない。

偏り始めている制度は要仕分け検討項目として社員の意見を聞く。

 

福利厚生制度は

①受益の公平性

②費用の妥当性

③利用時期の適正

④事業目的との整合性

⑤恒久性

 

をよく考えて実施したつもりでも、なかなか残るものと残らないものがあるので面白い。

 

なお、従業員の生活に大きな影響があるような住宅制度などは気まぐれで廃止すると大反発が起きるので実施は慎重に検討する必要がある。

 

それから、社員教育についてであるが、社長が直接従業員の教育に当たれている間は十分理念や会社の方針が伝わるが、ミドル層にマネジメントを任せ始める従業員10人くらいの組織となると、社員教育が末端に伝わらずにサービスの低下が起き始める。

 

ミドル層のマネジメント職には指数的な目標と、重要な点を絞って繰り返し伝えていかなければならない。

 

 私たちのような事務職は毎日の創意工夫が非常に重要で、一秒でも作業時間を短縮する工夫は日々繰り返し行わなければならない。マイナス成長してしまう落ちこぼれは必ず出るが、その率が高くならないように愛情をもって教育できる人物であるよう、ミドル層を育成しておくことは欠かせない。

 

それなりの規模でまだ社長が現場を切り盛りしている組織がよくあるが、能力の高かった人間はいつまでも人に任せられないのである程度の年齢となると結果的に無能になってしまう。

 

代表者が死んでもなんとか会社が運営できるように、文書で、目標指数で、沢山のことをつたえていかなければならないのは創業してしまった経営者の義務で、いつまでも自分の会社だと思っていると組織は成長しないものだ。会社は公共物であり、社長はただの役割なのだ。

 

決してかなわないと知りながら、数年後にはリタイアしてバケーションしている夢を見ることも必要だ。 

 

 

 

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中小企業も公開したほうがいい会社の数字

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 私は新米ながら真剣に経営にあたっている。真剣に経営に取り組み、その結果がどうだったか、経営者の通信簿である決算書と経営指数を社内で公開している。最近は中小企業でも決算書を公開している会社が増えた。

 

良くも悪くも、恥も誉も全部公開すべきことを経営者に言いまくっているから、私もそうでなければならない。

 

中小企業にとって従業員とは、経営を大きく左右する存在であり、従業員無しでは経営は成り立たない。

 

ましてや当社のような10人規模の会社では、離職は結構なダメージで、より条件の良い会社に引き抜きされるとか、独立など、本人にとってハッピーリタイヤであればそれは喜ばしい事だけれどもやっぱり離職は恐ろしい。

 

組織に長く所属していると、いろいろ不満もたまってきて、特に問題となるのは会社への信頼がなくなること、働くことのプライドがなくなって辞めてしまうことがある。定着率を高めるためには日ごろから信頼を得る努力をしておくことが重要だ。

 

信頼を得る事とは、優しい言葉をかけたり、ほめたり、愚痴を聞いたりコミュニケーションを会社側(中小企業では社長)から積極的にしていくべきだけれど、それだけでは足りない。

 

労働の対価としての報酬は当然ながら、大切な社員たちから信頼を得る方法としてはやっぱり経営の透明性をアッピールしていくことが必要だ。

    

ということで、私は会社に関する数字は誰でも閲覧できるようにしており、興味のある人もない人も目に付く場所に配置している。いつでも内情は覗けるようにしている。

今は興味が無くても、不信な点があったり、やたら経営側が派手になったり羽振りがよくなったりすると興味がわいてくる。

 

「〇〇株式会社、〇〇億円の申告漏れ」

 

などのワードをニュースで見かけるとイコール脱税で、

 

 「年商10億円の会社社長」

 

と聞くと、10億円持っている社長と思っている人もいるはずだ。

 

会社員は税法も労働法も学校で学ばなかったため全く知らない人が多い。損益計算書貸借対照表もチンプンカンプンで、自分に関係ないと思い込んで勉強しないからいつまでも無知で従順な労働者のまま過ごしている。大企業の部長クラスでもわからない人はよくいるので、会社員の大半はそうなのだろう。

 

中小企業であっても社会の縮図であり、わが社に無知で従順な労働者は必要無いので、身近な自分の会社の数字を教材として勉強させている。

 

この会社はどんな経営思想で、どんな活動に金を使っているのか。会社の数字を見ればわかる人にはわかる。せめて当社の社員たちにはいずれわかるようになってもらいたい。

 

①経常利益(営業利益)

役員報酬

③使用経費内訳

④決算関連書類

⑤労働関連指数(定着率、有給消化率)

 

ここまで開示している中小企業は見たことがないが、教材のため公開している。私が経営にかかわる会社では役員の飲食代は経費として認めていないし、公私混同してはいけないことは誰でも知っている。金が欲しいなら会社で稼いでたっぷり報酬を受け取ればよいだけなのだ。使用経費内訳を見られていれば恥ずかしくてキャバクラなんて行けない。税務署は許しても、従業員は許さない。

 

その他評価基準や賞与分配方法、残有給休暇の掲示など、労働者にとって気になる労働関連の情報はいやでも目に付くところに貼りだしている。

 

(興味がない人も多いが、実はみんな気にしている)

 

じつは、会社の内情をさらしておくことは会社側にとってもメリットはある。

 

このご時勢会社の経営が傾くこともよくあることだが、やむを得ずリストラや賃金カットなど、労働者にとって不利益の可能性がある行為(不利益変更)を会社が実施する場合は一定の合理的理由が必要となり、合理的理由には会社の財務状況は当然含まれるわけだ。

 

財務状況を開示せずにリストラや賃金カットなど行えるはずもなく、ブクブクと私腹を肥やしたままの経営者が自腹を切らずに、労働者を切ることは許されない。

 

万が一のことも考え、中小企業も現状を開示しておくのも一つの手ではある。

 

 せっかくなので今年作ろうと思っているホームページにはわが社の就業規則を閲覧できるように(入職希望者が閲覧できるように)準備を進めている。

 

自分を律することは大変苦しい。それでも、経営指数が公開されている緊張感をもって経営に取り組むことが、健全な経営者を育てるのだと思う。

 

今の時代は隠し事ができない時代になって、経営者がつまらんことに会社の金を使ったりしているとやっぱり転職サイトやSNSで拡散されてしまうので、日ごろから何事も公開しておくことが安全管理なのだとも思う。

 

 

RESUS社会保険労務士事務所

山田 雅人

yamada@resus.co.jp